はじめに

 「介護」という単語は少し前の辞典には存在しない事を国民は知っているのだろうか。医療現場からみれば、実施不可能と考えていた介護保険制度が、強行されようとしている。介護保険制度は医療改革に失敗した末路に出現し、「健康保険組合の黒字転換・中小病院救済・十兆円の老人市場の民間企業への配分」を表の顔としているが、「強制的医療改革」を裏の顔としている。

多くの専門家が長時間の審議を重ねたにしては、不備な内容であるにも拘わらず、医療現場からは正面切っての議論も皆無だ。

論じる事さえ危険に感じるが、医療改革をライフワークとすると公言している私としては、議論をしない訳にはいかない。

 七年前ころより「これからは在宅医療の時代である。二十四時間対応してくれる地元のかかりつけ医を持とう」というキャンペーンがされた。

私も一大決心をして、スタッフを十八名に増やして、この三十四ケ月間、一月平均四十五名の在宅診療を実施した。

急病による往診を含めると、月二百回にもなる訪問診療のため土・日曜、休日もなかった。ターミナルケアと言われる「自宅で死を迎えた高齢者」も三十名に達した。

そうした現場から「介護保険制度」を国民の視点で検討した。