十二 提言 高齢者環境整備(保険)制度に 

 制度の理念は「痴呆高齢者などを家族だけでは支えきれないから、国民全体でその環境を支援する制度」であった。それが何時の間にか「老人を医療から引き離す制度」になっている。そして介護サービスの定価表を作ることで、(国民がお互いに、助け合わなければならない、という)奉仕の芽を摘んだ。

 一刻も早く、制度の抜本的な改革をしなければならない。

制度の欠陥は「国民の視点」の欠如である。国民に説明せず、国民の同意を得ていなかったことにある。奉仕や相互扶助の精神を育てることを放棄した事にある。

解決策は「痴呆老人をはじめとする助けが必要としている環境に営利を目的としないで、手を差し伸べる事」である。

これを実現するためには、介護保険制度を創設させた(カネ、カネと騒ぎまわる)エネルギーを排除することである。つまり「現状の健康保険組合をはじめとする保険者の救済に保険料を使わせない。営利企業と大中小病院に老人を食い物にさせない」ことである。

次に育ち始めた地区単位の高齢者医療福祉政策を支援することである。そして、国民の奉仕や相互扶助を認知し具体的に支援することである。これを実現するために、「高齢化社会環境整備制度を創設し、医療、福祉を含めた高齢者が抱える環境を守る保険に統合させる」ことである。医療を切り離すことは不可能であることを知るべきである。

 財源は社会保障としての国税、四月からの保険料、医療費の三十パーセント、寄付金などで十分である。国家が医療設備も完備した収容施設、健康維持・増進施設を全国に無数に作る。農業、商業などをはじめとする生産村の建設なども考えられる。登録しておけば、全国どこにでも移ることができる。(そんなに、高齢者の人口比率が多いのであれば、コンサート・ホール、映画館、図書館、娯楽施設などは全て高齢者のために作り、若い国民も利用するようにすればよい。公設民営で利益を目的としない運営とすれば良い。国公立病院の医師、医学生や大学生そして社会人がそこで奉仕することを義務づけてもよい。

高齢者は施設に捨てるのではなく、夢の中に包むのである。社会的入院収容などの議論はあまりにも低いレベルである。

 夢の有る施設が永久に残り、将来自分自身も使用できるとなれば、現在の負担を納得しない国民はいないであろう。

 さて、介護保険制度が混乱し納得の行く制度になるまでの期間取り合えずしなければならない事がある。

 まず現行の「調査、コンピューター判定、判定会」などを即時廃止する。

「その高齢者の環境に、どの程度の社会的支援が必要か」の判定会のみにすべきである。かかりつけ医師、行政側、そして専門家によって、現場においてされるべきである。

判定会も定期的に開かれ、評価・見直しが公表する。

 モデルとしたドイツで介護保険制度下の介護サービスの荒廃(虐待、放置)が伝えられている。施設・事業者・ホームヘルパーなどの介護労働者など全ての部門について監視機構が皆無で、精度管理が野放しであるわが国においては上述のような問題が次々と発生するであろう。

直ちに全国規模の「行政と独立した公的・非公的介護監視機関」が設立されなければならない。国民と現場の意見を集約し、制度改善に繋げる。個別的な問題から自治体による審査判定などの全体的な問題そして介護サービス供給事業所の精度管理に至るまで監視しなければならない。介護保険による介護サービス以外の市町村の福祉政策も監視し、全国的な解決策を探さなければならない。

 そして、現在ある判定会は、医療保険における「国保・社保審査会」と同じ機能と権限を持ち、国民の代理として事業者そして施設からの支払い請求の審査をすべきである。

国家は国民の判断力を信じ、医療機関・保健施設の善悪判定を国民自らにさせ、国民の希望要求内容を公表すべきである。

これらが高齢者医療福祉制度と言える。